■アリスの庭
あのころの我が家の庭はまるでアリスの庭だ。
庭には、綺麗な白いブランコがあり、大きな滑り台、そして手作りの木の飛行機。
自分の数倍もある木々が、涼しい陰をつくっていた。
花々は誇らしげに咲き誇り、中でも庭の真ん中にある、一本の八重桜は大きな枝を重そうに支え何重にも重ねた薄いピンク色の花を庭一面に風と共にちりばめていた。

小さなティーカップに桜の花びらを一枚浮かせ、その日は私は独りでままごとに熱中していたのだ。

「さくら・・・・ちゃん」
よそ者に眼もくれず、ティーカップを人形の前に置き、ままごとを続けれる私。
そのうち、よそ者は、私の滑り台に上って独りであの庭で遊び始めた。
私は横目でそれを見て、舌打ちをしたい気分になった。
自分はこの庭の主人であるはずなのに。他人が遊ぶ。
どうにも幼い私は許せない。

すっくと立ち上がり、つかつかと、滑り台の上り口に向かう。

よそ者は、滑り台を上ろうとしたところで私に気づいた。

最初に声をかけたのは私だった。

「のぼっちゃだめ。」

よそ者は何も言わない。
その代わりに私の親が、はらはらしながら声をかけた。
「さっちゃん。いいのよ!遊んで行ってね。」
私はかっとなり、上りかけた彼女をつかんだ。
「のぼっちゃだめ!!!」

彼女はあっさり、降りて、木の飛行機のほうに行った。

私は、無視された怒りで「なんだこいつ!!!」と、飛行機を投げ飛ばした。

さっちゃんは、私をみた。
はっと。
いや、じっと見た。

そのとき、もう決まったのかもしれない。
逃げるのは君。
追うのは私。

時計を持って逃げるのは君。
ただただ、理由を知りたくて追うのは私。

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