■ミッドナイト魚屋
近所に、魚屋さんが経営するちょいと洒落たダイニングバーがある。

いくら、こじゃれていても、くるのは近所のお百姓サンたちなので、あまりロマンチックではない。
雰囲気いいのに、みんな声がでかいのでよく響くし、子供連れできちゃうひともいるし。

一回友達といったけど、30分であまりの喧しさに店を変えたことがある。

でも、味は魚屋さんだけあって、まずまず美味しい。

さて、こんなお店、11時に行ったらどうだろう。
お百姓さんたちが帰って、ただの美しいダイニングバーになっていた。

トニーは満足そう。
「駐車場も広いし、すごい雰囲気いいね。」(田舎なのに:幻聴)

そこで、トニーは自分の大好きな焼酎の種類もそろっていることがひどくうれしかったらしく、車の事を思って唸った。
真剣に眼差しを見てると、(焼酎のメニュー見てるだけだけど)本当にトニーレオンに似ている。
私の視線でトニーは笑った。
「この前サクラちゃんが芦屋から帰ったのすごく気になってたんだ。悪いことしたなと思って。今日は俺がここから電車で帰るよ」

トニー泣かせる。

でも、トニーは知らない。
ここはJR芦屋とは違って、クソ田舎なので、今からダッシュしても登り電車なんかない。

それを告げると、トニーはひどく悲しそうになった。
あまりに悲しそうなので、私は少し飲んで覚まして帰ればいいよと言ってあげた。

結局トニーはビール2杯と焼酎を飲んでしまった。

少し酔ったトニーは、私が彼を見つめることを「どうして?」と聞いてきた。
「トニーは私とあんまり目合わさないね。」
私は反対に聞いてみた。

「気にならない人だったらいいんだけど…。あなたは。違うから」
「よほど嫌われた?」
わかりきった事をもう一回聞く。
「あなたは、良すぎるから…。恥ずかしいんだ」
ぎこちなく"あなた"とトニーはいう。

「思ってない人には、何とでも言えるんだよ。いつものノリで。でも、あなたには言えない…」
俯いて呟くトニーに私は、正直どうしようかとうろたえた。

トニーは私の手を握って、誰もいない店の片隅でキスをしようとしてきた。
私は、うろたえたまんま思わず制した。
トニーは後ろを振り返って「店員さんいるもんね。地元だしね。ごめん」と言った。

その後、ダーツバーで遊んで、トニーは私を家まで送って帰っていった。
お休みのキスをして、家についてから髪を解いていると、トニーから電話が来た。

「あの。声が聞きたくなっちゃって。メール送ったんだけど見た?」
嫌な予感がした。
「まだ。見てないよ。どうしたの?」

うん、ならいいんだ。本当に楽しかったから。
言い聞かせるようにトニーはいう。

「運転、気をつけてね。帰ったら、明日でもいいから必ず連絡頂戴ね。」
無事にこの人は帰れるのか心配になった。
「うん。ありがとう。またね。」

そしてその日のデートは午前3時に終了した。

トニーは私との間になにか課題を持っているようだった。
なんとなく、そう感じた。

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