一瞬、彼の表情が「?」になった。
切れ長の目が、わずかに丸くなった。

かっこいい。
キョン子の旦那に似ている。永瀬だっけ。

ムンと、川の匂いがする。道頓堀川からの匂い。夏の匂い。
金曜8時の引っ掛け橋は人が増えて、私達のグループは自然に少しずつ、ばらばらに人ごみに流される。

私は彼の肩に片手を添えた。
すると彼は私のほうに耳を傾ける。
もう一度私は、そっと、彼に言う。

「お兄さんとどこかに行きたい」

雑踏の中で、わざと小さな声で言う。彼はもっと私に近づく。
「早くしないと、皆が気づいちゃうよ」

そういった後彼は私の目をみた。
もう、彼の目はビックリした様子はなく、少し困ったような私をなだめるような、優しい目だった。

そんな彼の目はさっきよりもセクシーだとおもった。

「いいの?」
彼は、わかりきった質問を言う。

「いいの。お兄さんこそお友達はいいの?」
少し離れた場所で私の友達としゃべっている彼の友達に視線を上げる。
向こうで友達が私に手をふっている。

私は手を振りかえす。

すると彼は私の耳にキスをした。

「強いね。君」

初めて標準語を話す男に出会った。

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